失われた龍の系譜/トレース・オブ・ア・ドラゴン

知らぬ人はいない世界的なアクション・スター、ジャッキー・チェン。
そんな彼の知られざる生い立ち、そして彼の両親の激動の人生に焦点を当てたドキュメンタリー。
監督は「玻璃(ガラス)の城」「宗家の三姉妹」の女流監督、メイベル・チャン。

「ジャッキー・ファンとしては見ておかないといけないだろう!」という所謂ファン心理で見たのですが、そんな軽い作品ではありませんでした。

いかに現代の日本に住む自分たちが恵まれているかという事。

そして、人間の生きる力の凄さを改めて実感させられました。

これはジャッキーの物語であり、ジャッキーの両親の物語であり、激動の時代を生きた中国人たちの物語であり、そして同様の辛く苦しい時代を経験した全ての人々の物語です。
兄と姉が2人ずついて、父はかつて国民党の諜報員であり、母はアヘンの密売をしていた事。

そして両親は共産党の追手から逃れる為に子供を捨て、姓を捨てた事。
淡々とした語りで浮き彫りにされていくそれらの事実は、その時代を生き抜いた人々にとっては決して特別なものではないのでしょう。
戦時中、そして戦後の日本でも同じような壮絶な人生を歩んだ人々は数多くいるはずです。

生きる為にただそうするしかなかった。

あまりにも哀しい決断。

しかし、それでも「生きる」事を選んだ力というものは凄まじいものだと思います。

ジャッキー・チェンの生い立ちや成功までの道のりのみならず、生きる事とは、そして家族とは何なのかを深く考えさせられる作品です。
年老いて目も虚ろな車椅子の母親に向けるジャッキーの笑顔は、映画の中で見せる笑顔よりも何倍も穏やかで優しさに満ちていました。


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