乱歩地獄

江戸川乱歩の未映像化作品を、新旧多彩な監督陣で映画化したオムニバス・ミステリー。
出演は浅野忠信、成宮寛貴、松田龍平、吉行由実、市川実日子、寺島進、岡元夕紀子、韓英恵、緒川たまき、田口浩正など。
監督は、「火星の運河」を「私立探偵 濱マイク」の竹内スグル、「鏡地獄」を「帝都物語」「姑獲鳥の夏」の実相寺昭雄、「芋虫」を「やわらかい肌」「刺青 SI-SEI」の佐藤寿保、「蟲」を漫画家のカネコアツシがそれぞれ担当。

小学生の時に怪人20面相シリーズにハマって以来、大好きな江戸川乱歩。
最近久々に読み返してみたら昔読んだ時よりも、更にそのどろどろと暗く蠢く異形の美に魅了されてしまいました。
この「乱歩地獄」制作のニュースを聞いた時、実はかなり興奮しました。
何故なら映像化される4編の内の1つが「鏡地獄」だったから。
数多くの名作を生み出している江戸川乱歩ですが、その中でも「鏡地獄」は傑作の一つ。
内面が全て鏡に覆われた球体の中に入ると何が見えるのか。
それを如何に映像化してくれるのかとかなり楽しみにしていました。

以下、各エピソード毎の感想。


「火星の運河」
前衛的な映像のコラージュで構築された10分ほどの短編。
生理的な不快感を煽るかのようなざらついた映像とノイズはなかなか面白かったんですが、実験の域からは脱し切れていませんでした。

「鏡地獄」
最初に書いたように最も楽しみにしていた作品。
しかし、原作とは全く異なるミステリー仕立ての作品になっていました。
明智小五郎まで出てくるし…。
実相寺昭雄ならではの、鏡を使った凝りに凝った映像や、倒錯した耽美な世界観、成宮寛貴の意外な熱演などそれなりに楽しめた事は確かですが、問題の球体内部は映像化されず、しかも球体自体かなりこじんまりしてました…。
あれを映像化しないのなら、この作品をやる意味ないと思うんですけどねぇ。
楽しみにしていただけにがっかり。

「芋虫」
これが一番表面的には原作に近かったですね。
ただ、怪人20面相が登場する必然性は感じないし、原作になった突き放したような客観性が無かったのが残念。
狂気にとらわれていく傷痍軍人の妻を演じた岡元夕紀子の、何かに取り憑かれたかのような演技はなかなか見事でした。
ただ、これも原作にあった人間の心の奥底に巣食う闇を何処までも残酷に抉り取ったような不快感を感じる事は出来ませんでした。

「蟲」
前の3作同様これもある種の愛を描いた作品。
けばけばしい程にカラフルで異様なヴィジュアルとシュールな笑いが塗りたくられたこの世界観が一番印象に残りました。
ストーリーの展開などはイマイチ精彩に欠けますが、緒川たまきの妖しい魅力だけでこれはもう見た価値ありました。
あの生気のない虚ろな表情は素晴らしいです。
そう言えば緒川たまきは「楳図かずお恐怖劇場」でも同じような役やってましたね(苦笑)

全体を通して感じたのは、やはり江戸川乱歩の作品を映像化するのは至難の業だなという事。
美と醜、実と虚が入り混じった妖しくも美しい禁断の世界は、読む者の頭の中にこそ存在するのかも知れません。


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コメント

  1. のり says:

    「芋虫」は原作良すぎるので難しそうすね…( ̄∀ ̄)
      
    三上博史の『屋根裏の散歩者』もオモシロイすょ(σ゚Д゚)σゲッツ
    そういえば『人間椅子』とかも映像化されてましたね…

  2. sin says:

    そやねんなぁ。
    別に原作を超えろとは言わんけど、せめてもう少し満足させて欲しいわ。

    乱歩作品の映画化って全部短編ばっかりで、何か無理に長くしてるやつとかもあるから、どうせなら原作に極力忠実な短編映像集を作って欲しい。

    まぁ作り手側がイマジネーションを膨らましてしまうのは分からんでもないけど(苦笑)

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